O-006 膵臓移植大動物モデル作成に向けての取り組みと課題

◎古屋 欽司1  高橋 一広1  久倉 勝治1  橋本 真治1  宮﨑 貴寛1  土井 愛美1  下村 治1  馬上 頌子1  大和田 洋平1  小川 光一1  大原 佑介1  明石 義正1  榎本 剛史1  小田 竜也1
筑波大学消化器外科1

肝臓移植や腎移植において、多くの小動物・大動物モデルがあるものの、膵臓移植の大動物モデルは限られている。
当科では、膵臓移植の再開を念頭に置き、①手技の洗練のための大動物でのトレーニング目的として、②手術手技の工夫や臓器保存などの基礎研究のためのツールとして、全身麻酔下の大動物を用いた膵移植モデル確立を目指し、ブタでの移植実験を重ねてきた。今までの試みと、大動物モデル作成における課題について、現状を報告する。
当科では、医学生を対象としたブタでの手術手技演習や、ブタ肝切除による肝再生の基礎研究で行ってきた経緯があり、ブタに対して全身麻酔を行って外科手術を行うことにについては、環境は整っていた。しかし、移植に関する大動物での研究は近年は行っていなかった。
そこで、まずは手技のトレーニングとしてのブタ臓器摘出シミュレーションから開始した。2020年から2回、計4頭のブタを用いて、人と同じ手順で大動静脈へのカニュレーション、クロスクランプ、灌流、腹部臓器摘出を行い、大動物に対する臓器摘出手技を確立した。その後、2021年からは、血管吻合による臓器血流再開までの手技のトレーニングを計2回実施した。また、2022年からは膵グラフトの血管吻合後、灌流状態を評価することも含めた手術演習として2022年より2回の実験を実施した。1回目においては、膵グラフトの血流はやや不良であり、翌日にブタは死亡した。2回目においては、膵グラフトの色調は、再還流直後は良好であったが、徐々に暗赤色となったため、全身麻酔下のままでグラフトを摘出した。血管吻合部を確認すると血栓を認め、これが上腸間膜静脈側へと連続していた。
ブタを用いた膵移植モデルにおいても、ヒトと同様に血流再開後の門脈血栓症が課題になると考えられた。膵移植再開に向けたトレーニングを兼ねつつ、血栓予防につながる臓器保存、再灌流の工夫についての基礎的な検討を行っていきたい。

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