O-004 慢性膵炎モデル膵島分離におけるGrimontia hollisae由来コラゲナーゼの有用性
◎蘇 航1
京都大学 肝胆膵・移植外科1
【目的】慢性膵炎に対する膵全摘後自家膵島移植の臨床応用が進んでいるが、線維化によりⅥ型コラーゲン等が豊富となった膵からの膵島分離が困難であることが課題である。近年開発されたGrimontia hollisae 由来のリコンビナントコラゲナーゼ(ブライターゼ)は、従来の酵素で消化困難なⅥ型コラーゲンの消化が可能である。また、コラゲナーゼ結合ドメインを有さず膵島へのコラゲナーゼ残留が少ないことから、移植成績に好影響を与える可能性がある。我々はマウス慢性膵炎モデルを作成し、ブライターゼの膵島分離・移植における有用性を検証した。
【方法】8週齢C57BL/6マウスにセルレインを腹腔内投与して慢性膵炎モデルを作成した。投与後の病理所見を確認し至適誘導期間を決定した。ブレンザイム(B群)・Collagenase P(C群)・Liberase (L群)の3種のコラゲナーゼを用いて慢性膵炎マウスから膵島分離を行い、同種同系STZ誘導糖尿病マウスの腎被膜下に膵島移植を実施した(200IEQ)。
【結果】Masson's trichrome 染色等の評価によりセルレイン4週誘導の慢性膵炎マウスが至適な線維化の程度であると判断した。慢性膵炎マウス(各群n=16)の膵島分離結果では、B群・L群はそれぞれC群より膵島収量が有意に良好であった。さらに酵素溶液濃度あたりの膵島収量での比較を加えると、B群はL群より有意に良好であった。膵島移植結果においては、有意な差に至らなかったものの、血糖正常化率および正常化までの期間においてB群が最も良好な傾向を示した。
【結語】Grimontia hollisae由来コラゲナーゼは、線維化膵において良好な膵島分離効率を示し、膵島移植成績においても良好な傾向を示すことから、慢性膵炎に対する膵島分離において有用なコラゲナーゼとして発展する可能性がある。