O-014 心停止下ドナーからの臨床膵島移植の再考
◎吉松 軍平1
坂田 直昭1
小玉 正太1
福岡大学 再生・移植医学講座1
臨床膵島移植が保険収載されてから膵島移植実施数は徐々に増加してきている。しかし、複数回移植が前提の膵島移植では、膵臓移植レシピエントの数の2-3倍のドナーを必要とするため、貴重な臓器提供の機会を逃さず膵島分離、移植を行っていくことが重要であり、同時に臓器提供に対する普及活動は継続的に行っていく必要がある。
2020年以降の膵島移植に対するコーディネーションについて、当院ではドナー因子以外で3回の膵臓摘出断念例があった。原因は、CPC内の顕微鏡の修理、コラゲナーゼの納入遅れ、斡旋に関わるシステム上の問題であった。コラゲナーゼについては、供給不安定な理由について検討を行い、今後の対応を計った。臓器提供普及活動は全国的にこれまでも行われており、脳死ドナー数について大きな変化は望みにくい。当科では、先進医療下での臨床研究以降、3例の心停止下臓器提供を経験した。2例は当科で膵島分離を行い、1例は他施設に臓器搬送し膵島分離が行われ、3例全例で移植に至っている。2000年代に行われた膵島移植とは異なり、免疫抑制剤のプロトコール改善や、ECMO/IABP使用など心停止下でも臓器血流を維持できる手法が出現し、ドナー拡大の観点から、再度心停止症例を見直しても良いのではないかと考える。心停止症例であっても速やかに臓器摘出を行うことで、膵島移植につなげることができる可能性がある。移植機会を増やすという点で、心停止症例についても現在行っている臓器提供普及活動を多角的側面から継続的に行い、膵臓摘出、膵島分離を行うことで、複数回移植の期間をより短く完遂することができ移植成績向上につながる可能性があると考える。