O-002 再生医療によって作成されたinsulin producing cell移植後の自己免疫による影響に関する基礎的検討

◎脇 悠平1  池本 哲也1  斎藤 裕1  寺奥 大貴1  山田 眞一郎1  森根 裕二1  島田 光生1
徳島大学消化器・移植外科1

【背景】重症の1型糖尿病に対するパラダイムシフトとして、我々は再生医療を用いた新たな細胞移植医療の樹立に向けた研究を継続的に行ってきたが、再生医療によって作成された新生β細胞を自家移植した際に、自己免疫から攻撃されるか否かは、我々の戦略を医師主導治験として確立するに当たって大きな科学的問いである。
【方法】1型糖尿病モデルマウスであるNODマウスの自然DM発症した個体から脂肪由来幹細胞(adipose derived stem cell: ADSC)を分離し、我々の発案したinsulin-producing cell (IPC)の2- step分化誘導法/新規3次元培養法/xeno-antigen freeでNOD-IPCを作成し、自然発症したNODマウスに移植(syngeneic Tx)を行い、血糖測定および組織学的検討を行った。また、ヒトADSCから、同法でのIPCの分化誘導に沿って経時的にHLA Class I/IIの発現を計測した。
【結果】DM NODマウスへNOD-IPCを移植すると、10日程度で血糖の正常化を認め、30日まで維持された(100%)。その後、75%のレシピエントで60日で血糖値は再上昇した。30日では移植NOD-IPCはインスリン染色強陽性であり、染色強度は60日より高かった(P<0.05)。ICA、ZnT8の発現には差がなかったが、GAD65は染色強度が60日で30日より上昇していた(P<0.05)。浸潤CD4+/ CD8+cellの数は、60日で多かった(P<0.05)。 非一方、ヒトIPCについては、HLA Class Iは分化に従って徐々に発現低下、Class IIは変化なしという奇異な発現パターンを示した。
【結語】再生医療によって作成された新生β細胞の挙動は未知な側面が大きいものの、長期では自己免疫の攻撃を受ける可能性が示唆された。この知見は医師主導治験を展開するに当たって、今後の方向性を示す科学的結果と言える。

r Clinical Engineers. All Rights Reserved.