WSP2-002 脳死下膵島移植推進の根拠と方策
◎明石 優美1,2
加藤 櫻子3
吉川 充史3
會田 直弘1,4
栗原 啓1,4
伊藤 泰平1,4
剣持 敬1,4
日本膵・膵島移植学会「膵島移植班」事務局1
藤田医科大学保健衛生学部看護学科 2
藤田医科大学病院移植医療支援室 3
藤田医科大学医学部移植・再生医学 4
【背景】膵島移植は1型糖尿病に対するβ細胞補充療法として考案されたが、長く長期成績が不良であった。近年Edmonton protocol、CIT protocolの導入により臨床成績は劇的に向上した。本邦でも、2020年に脳死ドナー、心停止ドナーからの膵島移植が保険収載された。
【方法】「膵島移植班」事務局のデータベースから、2003.9~2022.7に本邦で実施された脳死ドナー、心停止ドナーからの94回の膵島分離、および膵島移植の成績を比較し、脳死下膵島移植の有効性について検討した。
【結果】94回の膵島分離を、心停止ドナーのDCD群(n=72)と脳死ドナーのDBD群(n=22)に分け比較検討した。膵島収量は、DCD群で300,677±191,490 IEに比較して、DBD群で410,611±102,860 IEと有意に高かった。膵島純度も、DCD群44.4±18.1%に比較して、DBD群で52.6±18.0%と良好であった。DCD群で移植に至った例は72例中39例で移植率は54.2%であったのに対し、DBD群では22例中19例、86.4%と高率であった。以上の分離成績より、脳死ドナー提供の膵臓からは良好なQualityの膵島が高収量で分離され、新鮮膵島移植基準を満たし、移植されていることが分かった。また、心停止ドナーを用いた本邦の臨床膵島移植成績(Edmonton protocol)は、5年膵島生着率は22.2%と低かったが、主として脳死ドナーを用いた成績(CIT protocol)では3年生着率が80%と著明に改善している。
【考案・結語】脳死ドナー膵からは良好なviabilityを有する膵島分離が可能で、収量も高く、移植率が高いことが明らかとなった。また免疫抑制法は異なるが、主として脳死ドナーを用いたCIT protocolの臨床成績が著明に改善し、脳死下膵島移植の長期成績の改善が示された。脳死ドナー膵は膵臓移植に優先されるが、最近では膵臓移植への使用率は40-50%であり、脳死下膵島移植の機会は増加している。膵臓移植に提供されない脳死ドナー膵をより効率的に膵島移植に用いるためには、臓器Co・膵島移植Coの連携、膵島移植Coや膵臓摘出における互助制度の確立、W承諾の効率的実施などを着実に遂行してゆくことが肝要と考える。
略歴
2003 年 臨床検査技師免許取得
2004 年 杏林大学医学部付属病院 臓器組織移植センター 組織移植Co
2010 年 (一社)日本スキンバンクネットワーク 組織移植Co
2014 年 東京大学医学部附属病院 組織バンク部 シニア組織移植 Co
2016 年 藤田医科大学保健衛生学部 看護学科 講師藤田医科大学病院 移植医療支援室
院内 Co / 認定組織移植Co
【参加学会・役職】
日本膵・膵島移植学会
理事
日本移植学会
代議員
日本組織移植学会
理事・評議員・ガイドライン委員会・認定医委員会等
日本臨床腎移植学会、日本臓器保存生物医学会 所属