WSP2-005 膵島移植の発展に向けた方策:膵島移植医の視点から

◎穴澤 貴行1  藤倉 純二2  山根 佳1  江本 憲央1  出羽 彩1  蘇 航1  井山 なおみ1  松山 陽子1  伊藤 孝司1  秦 浩一郎1  波多野 悦朗1
京都大学医学部附属病院肝胆膵・移植外科1 京都大学医学部附属病院糖尿病・内分泌・栄養内科 2

【緒言】2020年に同種膵島移植術が保険収載されたことにより、インスリン依存糖尿病に対する低侵襲な移植医療が提供出来ることとなった。保険収載により実施件数の増加が期待されたものの、現時点では期待ほどの実施件数増加に至っていない。保険収載後の臨床の実態から、実施における制約や課題を検討し、膵島移植をより進めるための方策を膵島移植医の視点で考察する。
【方法】
当院における2012年から2019年までの膵島移植成績をふまえ、保険収載後の膵島移植の実態を検討する。また実施数増加において制約となる項目を整理し、その解決に向けた方策を検討する。
【結果】
2012年から2019年までの膵島分離後移植率は86.7%(13/15)で、平均収量が393,235IEQであった。同期間の膵島移植後2,3、5年グラフト生着率は100%、80%および80%であった。保険収載後に実施した3回の膵島分離は全て移植実施可能で、平均収量は472,866IEQであった。初回移植後16ヶ月生着を維持している。移植実施の制約となった項目として、ドナーからの同意取得の問題と膵島分離用試薬の供給不安定の問題を実際に経験した。また、膵島分離メンバーの確保および負担軽減の問題、移植に至らなかった場合の費用の問題は、症例増加を目指す上で大きなハードルであると思われた。
【展望】
膵島分離成績は安定し、膵島移植グラフトの長期生着も望めることから、膵島移植は、低侵襲な移植医療として発展させるべき治療であると考える。一方で、組織移植に対し臓器である膵臓を提供することの提供体制の課題や、膵島分離において人的・コスト的負担が大きいことの問題は解決されておらず、臓器・組織移植のより有機的な連携体制の構築や膵臓提供・膵島分離における負担軽減策の検討が必要であると思われた。

略歴
2001年3月 福島県立医科大学医学部卒業
2001年4月 福島県立医科大学外科学第一講座入局
2007年7月1日 米国ミネソタ大学外科留学(膵・膵島移植の研究及び臨床)
2009年7月1日 福島県立医科大学臓器再生外科学講座助手 
2010年4月 福島県立医科大学臓器再生外科学講座助教
2015年4月 京都大学医学部附属病院 肝胆膵・移植外科/臓器移植医療部 助教
福島県立医科大学肝胆膵・移植外科 非常勤講師
藤田医科大学臓器移植科 客員講師
専門医・認定医:
日本外科学会専門医・指導医、日本消化器外科学会専門医・指導医、
日本肝胆膵外科学会高度技能専門医、日本肝臓学会専門医、日本移植学会認定医、
日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本再生医療学会再生医療認定医、
日本組織移植学会認定医
主な所属学会(役職):日本移植学会(代議員)
日本臓器保存生物医学会(理事)
日本肝胆膵外科学会(評議員)、日本膵・膵島移植学会(評議員)、
日本組織移植学会(評議員 幹事)、
近畿外科学会(評議員)
国際膵膵島移植学会
日本外科学会、日本消化器外科学会、国際移植学会等
受賞:
福島医学会学術奨励賞(2011)
日本臓器保存生物医学会学会賞(2011)
日本臓器保存生物医学会会長賞(2022)





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