九州大学病院での膵臓移植について

◎岡部 安博1  加来 啓三1  野口 浩司1  目井 孝典1  佐藤 優1  久保 進祐1  中村 雅史1
九州大学大学院臨床・腫瘍外科1

1997年10月「臓器の移植に関する法律」施行後、2000年4月に大阪大学病院にて第1例の膵腎同時移植が行われた。2001年8月には当院最初の脳死下膵腎同時移植が行われた。その際には担当医として摘出手術、移植、術後管理に関わることができた。一方では膵臓移植の待機中に死亡される方もおられた。少しでも早く膵臓移植を受けて頂きたいと生体膵移植、膵腎同時移植も計画し施行した。当院では2件の生体膵腎同時移植、2件の生体膵単独移植を経験している。
その後、脳死法が改正され、家族の同意によって臓器提供が可能となると脳死下での臓器提供は増加し、脳死下膵腎同時移植も増加していった。現在では脳死下での膵移植の機会がかなり増加したため、2014年を最後に当院では行っておらず、本邦でも近年では生体膵移植は行われていない。
当院では2001年当初から一貫してヘパリンフリーの術後管理を行っており、この10年では血栓症による膵摘出は経験していない。最近では外腸骨動静脈をSwingして外腸骨静脈と門脈吻合を外側にして吻合している。また、当科では移植膵を右後腹膜腔に静置するようにしている。この利点は、移植床作成が腎移植同様に簡単に出来ること、膵臓が腹腔内と隔離されることにより固定されやすくなり、早期の離床がしやすいことが挙げられる。十二指腸、小腸吻合では初期には十二指腸-空腸との端側吻合を行っていたが、最近では十二指腸と回腸との側々吻合を1か所のみで行っている。当科では、術後の大量消化管出血を数件経験しており、Roux-en-Y 吻合では吻合箇所が増えること、リークしたときにストーマを上げやすいことなどから吻合部を一か所としている。
術直後の管理は早期血栓の予防と消化管の減圧が重要と考えており、頻回の超音波検査、十分な輸液、早期離床、排便コントロールを行っている。当院では2023年1月末までに88件の膵移植を経験してきた。当院での膵移植の変遷と最新の方針について報告する。

略歴
学歴: 平成元年 (1989)  3月 31日 福岡県立修猷館高等学校卒業
           平成8年 (1996)  3月 27日  九州大学医学部卒業
学位: 令和2年 (2020)  4月 30日 医学博士(九州大学:乙第2766号) 
職歴: 平成 8年(1996) 5月 15日  九州大学医学部附属病院 第一外科入局(研修医)
           平成 8年(1996) 12月 1日  Pittsburgh大学訪問研究員
           平成 9年(1997) 2月1日 九州大学医学部 第一外科 研修医
           平成 9年(1997) 5月15日 聖マリア病院 スーパーローテーション/外科
           平成12年(2000) 4月1日 東京女子医科大学 腎臓病総合医療センター 
           平成13年(2001) 4月1日 九州大学医学部 第一外科 医員
           平成15年(2003) 4月1日 豊見城中央病院 外科
           平成17年(2005) 4月1日 九州厚生年金病院 外科
           平成18年(2006) 4月1日 九州大学病院 第一外科 医員
           平成20年(2008) 1月1日 藤田保健衛生大学病院 肝・脾外科 助教
           平成22年(2010) 4月1日 九州大学病院 臨床・腫瘍外科 特任助教
           平成25年(2013) 5月1日 原三信病院 外科医長
           平成27年(2015) 10月1日 九州大学医学研究院 臨床・腫瘍外科 特任助教
                                       膵・腎移植グループチーフ  
           平成28年(2016)  4月1日 九州大学医学研究院 臨床・腫瘍外科 助教
           令和 4年(2022)   4月1日 九州大学医学研究院 臨床・腫瘍外科 講師 
                        現在に至る

所属学会    日本膵・膵島移植学会 理事
        日本臨床腎移植学会 評議員 理事    
日本外科学会 外科専門医 
       日本移植学会 評議員 人材育成委員  
       日本小児腎不全学会 評議員 
       腎移植血管外科研究会、日本消化器外科学会、日本肝胆膵外科学会
その他   2016年 日本移植学会主催 次世代若手リーダーセミナーにて発表    
             2020年から日本移植学会の人材育成委員として活動している。


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